【採用担当必見!】在留資格とビザ(査証)の違いを徹底解説|行政書士監修シリーズ
外国人採用をするにあたって、「在留資格」や「ビザ(査証)」という言葉を聞かない人はいないのではないでしょうか。 それぞれ同じような意味として扱われることが多いのですが、在留資格は法務省(出入国在留管理庁)、ビザ(査証)は外務省(日本大使館または領事館)が管轄しているため、実は全く定義が異なります。 今回は、そんな混同されやすい2つの言葉の違いについて分かりやすく解説します。
【目次】
- 在留資格とは
- 在留資格の注意点
- ビザ(査証)と在留資格の違い
- まとめ
1. 在留資格とは
在留資格とは、日本に外国人が入国・在留する際に、その目的に応じて与えられる資格のことで、法務省の管轄となります。
そしてこの在留資格の申請先が法務省の外局に属する出入国在留管理庁になります。
この在留資格は出入国管理及び難民認定法(入管法)等で規定され、現在(2020年9月)29種類あります。
このうち定められた範囲で就労が認められる在留資格が19種類、原則として就労が認められていない在留資格が5種類、就労の可否が指定される活動による在留資格が1種類、就労活動に制限がない在留資格が4種類あります。
また、2019年の4月からは新しい在留資格「特定技能1号」と「特定技能2号」が新設されました。
この目的は、人手不足が深刻な業種に対して、5年間で約34万人程度を目標に外国人労働者を受け入れることです。
以下は、現在(2020年9月)認められている在留資格29種類の一覧表です。
引用:法務省 在留資格一覧表
2. 在留資格の注意点
在留資格の注意点は2つあります。
1つ目は、在留資格の中には、日本で就労できるものと、できないものがあるということです。
例えば大学留学が目的であれば「留学」という在留資格が与えられますが、この資格では基本的に就労はできません。
しかし入国管理局から「資格外活動許可」を取得することで働くことが出来ます。
これがあれば1週間のうち28時間以内であれば働くことができ、夏休みなどの長期休業期間以外で28時間を超える場合は、資格外活動許可の他に28時間を超える資格外活動許可を受ける事で働くことが出来ます(出典:法務省)。
外国人が日本で働くためには、就労が許可されている在留資格を取得している必要があるので、採用の際には在留カードの確認が必要だという事になります。
2つ目の注意点は、たとえ就労可能な在留資格だとしても、どんな仕事でもできるわけではないということです。
原則として、外国人は在留資格以外の活動に従事することができません。
たとえば通訳の仕事をする名目で『技術・人文知識・国際業務』の在留資格を有しながら、飲食店でウェイトレスとして働くことは出来ません。
必ず在留資格に紐付いた仕事をする必要があるからです。
そのためもし転職で仕事内容が活動の範囲外になった場合は、新たな在留資格に変更しなければなりません。
ちなみに永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者(日系3世、中国残留邦人等)の4つの資格のどれかに該当すれば制限なく就労が可能です。
もし在留資格ごとに決められている活動範囲や期間を超えて就労した場合は、本人も雇用主も「不法就労」の罪に問われます(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその併科の対象)。
たとえ事業主が、雇った外国人が不法就労の状態であったことを知らなかったとしても、処罰の対象となる可能性があります。
そうならないためにも採用時には在留カードの確認が非常に重要となってくるのです。
引用:出入国在留管理庁
3. ビザ(査証)と在留資格の違い
ビザ(査証)とは、日本国民以外の人の入国を許可する推薦状のことです。
これは外務省が管轄をしています。
以下、2つの役割があります。
(1)外国人の持っている旅券(パスポート)が有効であることの確認
(2)日本に入国させても支障がないという推薦の意味
日本に入国しようとする外国人本人が、在外の日本大使館や総領事館でビザ(査証)の申請を行います(※台湾の場合、公益財団法人日本台湾交流協会 台北事務所 または 高雄事務所)。
日本大使館や総領事館は外務省の管轄なので、ビザ(査証)を発給する権限は外務省にあります。
発給されたビザ(査証)はパスポート(旅券)にシールとして貼付され、日本への入国審査の際に入国審査官が確認します。
入国管理局は、ビザ(査証)に記載された滞在理由を見て、それに該当する「在留資格」を付与するかを審査します。
審査によって在留資格を与えられれば、それが日本に滞在するための根拠になるため、ビザ(査証)は無効になります。
出入国在留管理庁は法務省の管轄なので、在留資格を発行する権限は法務省にあります。
ビザ(査証)を発行する外務省と、在留資格を付与する法務省それぞれに審査基準があるため、ビザ(査証)があれば必ず在留資格が付与されるわけではないことに注意しましょう。
このように、「日本に滞在するために必要な資格」が在留資格で、「日本に入国する際に必要な資格」がビザ(査証)となります。
4. まとめ
今回の記事では、在留資格とビザ(査証)の違いについて解説しました。
これまでのものを表にして整理すると以下の通りとなります。
この2つの言葉はよく混同され易いですが、外国人の方を雇用する際に理解しておきたい言葉なので、ぜひこの機会にご理解頂けたらと思います。
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【監修】
呉 宗俊 (くれ むねとし)
国際サポート行政書士事務所 代表行政書士
東京都行政書士会 豊島支部 所属
東京都出身。国立台湾大学 国家発展研究所 国家発展学修士 修了。2009年より公益財団法人日本台湾交流協会の台北事務所(※ 在台湾日本大使館に相当する場所)にて3年間勤務。2014年に行政書士試験に合格し、同年に国際サポート行政書士事務所を池袋に開業。外国人の在留資格(VISA)、アポスティーユ、国際相続に関する手続きなどを専門とする。中国語、台湾語、英語での対応が可能。