優秀な外国人エンジニアが集まるスタイラーの採用事情と社内カルチャー

アパレルショップのスタッフとユーザーを直接結びつけるプラットフォーム「FACY(フェイシー)」を運営し、アジアを中心にビジネス展開を進めるスタイラー株式会社。創業当初から外国人採用を積極的に進め、現在社員の半数以上を外国人が占めています。優秀で多様な人材が集まるのは、フラットで健全なコミュニケーションを大切にするカルチャーだから。そう語るのは、HRマネージャーの渡邉文佳さん。スタイラーの人事部門をゼロから立ち上げ、現在まで担っています。そんな渡邉さんにスタイラーの採用方針や社内カルチャーの仕組み作りなどについてうかがいました。


――スタイラーの事業内容を教えてください。


渡邉さん:スタイラーは「未来の購買体験を創造する」をミッションとし、アパレル向けニューリテール・プラットフォーム「FACY」の開発・運営と、そこから派生したメディア事業・コンサルティング事業を手がけています。


FACYは、ユーザーが欲しいファッションアイテムに関する質問をすると、アパレルショップのスタッフが商品の提案をしてくれるサービスです。気になる商品はショップスタッフにメッセージを送って質問をしたり、FACY上でそのまま購入したり、店舗に行って試着したりすることができます。現在このサービスに加入しているアパレルショップ数は日本国内900店舗以上にのぼります。


サービスを立ち上げた理由は、例えば洗剤やシャンプーなどの消費財の場合、購入したい商品のスペックが明確であれば、ECサイトですぐに検索して見つけて購入できますが、ファッションやビューティー、トラベル、転職、不動産といったライフスタイル系分野では、ユーザーが漠然としたニーズだけを持っている場合が多く、無数のアイテムの中から自分にあったものを選択するのは非常に困難です。


そのため適切な情報を持っているプロに自分に最適なものを提案してもらい、購入の意思決定を後押ししてもらいたいというニーズが生じます。アマゾンや楽天のような検索型のUIではなく、ライフスタイル系分野で最適なアイテムを見つけられるようにすべく、私たちはオンライン上でも実店舗で接客を受けているような感覚で、プロのショップ店員が直接自分に最適なアイテムを提案してくれ、気に入ったものを購入できるサービスとして、FACYを立ち上げました。


――アプリ上のやり取りによって実店舗での接客経験を提供するというのは、まさにオンラインとオフラインを融合したニューリテール・サービスですね。


渡邉さん:オンラインとオフラインを融合させ実店舗での購入体験に近いサービス設計は、私たちが目指していることです。今後は弊社のビジョンである「3キロメートル圏内の購買体験を新しくする」ことをより具体的に実現させるために、2020年の秋頃に現在のFACYをリニューアルする予定です。位置情報との連動やショップスタッフとユーザーとのコミュニケーションがより一層強化されます。


また、今回サービスをリニューアルするにあたり、3つのバリューを作りました。


「FAST」:スピードは誠意であり、熱意を意味します。私たちは常に自分で判断し、最速の課題解決を目指します。現状の課題のみならず将来直面する課題についても最も早く気づき、解決していきます。


「FACTFULL」:私たちはバズワードに乗りません。客観的なデータや事実の積み上げにより、意思決定し、行動します。事実に基づいた最適なサービスの提供を約束します。


「FRENDLY」:私たちは結果に誠実です。立場や所属ではなく、常に世の中にとっての最適なコミュニケーションを続けていきます。


この3つのFを、今後は組織内にも発信・浸透させていきたいと考えています。



――2018年2月から台湾に進出されていますが、今後の展開について教えてください。


渡邉さん:初期の頃よりアジア圏に積極的に進出することを考えてきておりました。アジアを目指す理由は、スマホを代表とするモバイルビジネスにおいては、中国や東南アジアは日本や欧米よりはるかに先行している状況にあると考えているためです。


たとえば、中国ではスマホのECサイト上でショップスタッフとコミュニケーションを取りながら物を購入することが一般的だったり、実店舗においても商品にQRタグが取り付けられており、スマホで読み取ると、店員に聞くのと同じような情報を得ることができたりします。


アリババ創業者であるジャック・マー氏が2016年10月に提唱した概念であるニューリテールやOMO (Online Merges with Offline)は、アジア各国で進んでいくでしょう。私たちのサービスも将来的にはアジア圏で広く使われるサービスになってほしいと思っておりますし、最近はアジア市場で得た知見やFACYの開発・運営で培ってきたノウハウをもとに、大手企業などへのコンサルティングサービスを提供しております。


――スタイラーの社内カルチャーについて教えて下さい。


渡邉さん:「国籍や性別にこだわらず、多種多様な人たちがフラットに働けるカルチャー」と、「透明性の高いコミュニケーションによる健康的なカルチャー」作りに重点を置いています。


弊社にはエンジニアが多いのですが、コードを書く上で国籍は関係ありません。それもあって創業当初から国籍にこだわらず採用しており、現在は社員34名のうち19名が外国籍で出身国は14カ国に及びます。男女比は女性が全体の40%を占め、管理職は女性4名、男性3名と女性の方が多く、スタートアップの中では珍しいと言われます。


また、透明性の高いコミュニケーションを促すための仕組み作りもしています。たとえば社内の業務ツールにslackを導入し、ダイレクトメッセージではなく誰でも見ることができるオープンチャネルで業務のやり取りをすることで、誰がどのような業務に取り組んでいるか誰からも分かるようにしています。


さらに、会議も会議室ではなく、あえて共有スペースで開催することを促したり、議事録をメンバー全員にslack上で公開したり。他にも、目標管理には、OKRを導入しています。これは「Objective and Key Results(目標と主な結果)」の略で、チームや個人の目標を会社目標に整合させる仕組みとしてシリコンバレーのスタートアップ企業で導入され始めたのをきっかけに日本でも最近はよく利用されております。


弊社では誰からも会社やチームのゴールや、目標に対する進捗状況がわかり、他の部署間でもコミュニケーションを円滑に取れるとようにするため利用しております。メンバー全員がOKRツールにアクセス可能で、誰がどういう目標に向かって動いているのかをいつでも知ることができます。


――相手の目標がわかれば、お互いに協力したりコミュニケーションを取りやすくなったりしそうです。


渡邉さん:そうですね。特に外国籍メンバーは、「コミュニケーションによって課題を早く解決したい」という思考を持っている人が非常に多く、OKRの受け入れもスムーズでした。


実は、弊社に転職してくる外国籍メンバーの大半は、「日本の大手企業からスカウトされて働いていたけれど、日本的な縦割りの文化が好きになれなかった」という人たちが多いです。


グローバル企業と言っているにも関わらず、縦割り組織で内輪で物事が決まり、課題があっても意見は会議の場で求められた時にしか言えない。こういった社内カルチャーが合わないことを理由に転職してきます。彼ら、彼女らは課題があるとその場でキーパーソンとコミュニケーションを取って解決しようとするので、コミュニケーションを重視しスピード感を持って事業を展開したい我々のようなカルチャーがベースであるスタートアップ企業では非常に働きやすいと言ってもらえます。



――具体的な採用の流れについて教えてください。


渡邉さん:採用面接は3回行います。一次面接はHRマネージャーの私が行い、マインドセットが弊社と合いそうな人物か確認します。二次面接では配属先候補の部署マネージャーが面接をし、スキルや人物面を確認して最終面接に進みます。


最終面接は代表の小関が行うのですが、その前にバーレイザー(Bar raiser)2名が15分ほど面接をします。バーレイザーとは、面接水準を高く維持する役割を持つ社員のこと。配属予定の部署マネージャーの面接だと、メンバーを増やしたいため、時に甘い判断をしがちです。他部署のマネージャーがあえて厳しい目で確認することで、本当に会社に必要な人材なのかを見極めます。


また私たちだけでなく、相手の方にも当社の多くのメンバーと会ってもらうことで当社をよく知っていただく機会になると考えています。最終面接を通過後には、リファレンスチェック。現職か前職の上司の方に弊社から電話をさせていただいたり、推薦文を提出してもらうことで、実際に一緒に仕事をしていた方から、その方の人物像について確認します。


ただ、実際に100%リファレンスチェックの内容を信じる訳ではなく、現職・前職の職場での信頼関係やこちらからの依頼に対してどのくらい迅速に調整されるかを重視しております。国籍問わずこの流れで行っていますが、エンジニア採用に関しては丸1日とって来社してもらい、技術力とコミュニケーション力の確認をするために、エンジニアメンバーと一緒に仕事をしてもらいます。


――採用ハードルを高く設けられているのだなと思いました。次に、スタイラーの採用方針について教えてください。


渡邉さん:3つあります。ひとつ目が、自走できる人物であること。スタートアップは事業スピードが早いため、指示を待つのではなく自ら課題設定をして、その課題の解決方法を考え、実行できることが重要です。


ふたつ目が、中長期的なビジョンを持っていること。面接では、3年後、5年後のご自身のビジョンについて深掘りさせてもらいます。それが必ずしもスタイラーが向かう方向と合わなかったとしても、その目指している方向性がスタイラーにとって良いものであれば、積極的に採用したいと考えています。


3つ目は、謙虚で客観的な視点を持っていること。例えば面接で、「もしあなたが現職の会社にいなかった場合、チームや会社はどうなっていたと思いますか?」という質問をしています。


謙虚かつ客観的な視点を持っており、組織を理解している人は、「たとえ自分がいなくても、このように成長できたと思う」という回答をするのですが、自分のことを過大評価する人だと、「自分がいなければ、絶対にこれはできなかった」という回答をしがちです。そういった人の場合、チームワークがうまくいかなかったり、自分の考えだけが正しいと思っている傾向が強いため、あまり評価できません。


――では、実際にスタイラー入社後に活躍しているのはどのような人でしょうか。


渡邉さん:活躍している人たちに共通するのは、課題設定能力の高さです。コミュニケーションを取るなかで、相手が持つ課題をすぐさま掴み、その課題を解決するために自分ができることを提案し、実行できます。特にスタートアップの場合、自分の組織の課題だけではなく、事業全体の課題もキャッチアップし、自分自身や自分のチームを動かせる力が必要です。


また、人間としての品格があることも共通していますね。品格には、年齢や経験値は関係ありません。自分の私利私欲ではなく、大局観で物事を見て、全体にとっての最適解を考えられることを指します。


――スタイラーでは外国人を積極的に採用していますが、多様な人材を確保することで生まれているメリットがあれば教えてください。


渡邉さん:弊社ではエンジニアの外国人採用が多いのですが、正直メリットしかありません。大きなメリットはふたつです。まず、エンジニアとしての技術力が全体的に高いこと。


コンピューターサイエンスやテクノロジーに関する学部がある大学は、海外の方が多いです。そのため、学生時代から専門的に学び、技術力のベースが高い。次に、思考プロセスの幅が広く、上位概念から課題解決プロセスを落とし込む人が多いこと。


たとえば、弊社のエンジニアマネージャーは、何かを考える時に必ず会社のミッション、ビジョンに立ち戻ります。「スタイラーのミッション、ビジョンを実現させるために、今の課題に対して、エンジニアである自分がやるべきことは何か」という考え方をする。こういう思考の持ち主がいると、まわりもそれに影響されて本質的な課題を考えられるようになるので、事業の成長には不可欠な存在だと思います。


――渡邉さんは、新卒でNTTデータ、2社目ではDeNAで働かれていましたが、その後スタイラーに転職した理由を教えてください。


渡邉さん:事業のユニークさに惹かれたことと、代表小関の考え方に共感したことが大きな理由です。あと、オフィス見学をした時に会った若手メンバーたちの雰囲気が、とても良かったのです。3年前のことですが、今でも印象に残っているくらい。彼らの型にはまらない自由な雰囲気や、人としての暖かさに惹かれて、ここで一緒に働きたいと思いました。


――スタイラー入社後は、どのような仕事をしてきたのでしょうか。


渡邉さん:創業間もないスタートアップだったので、広報や人事総務、ファシリティ業務など、社内のあらゆる業務に携わっていましたが、入社当初はエンジニアが少なく、ベトナムにあるオフショア会社にシステム開発を一部外注していたので、そのディレクション業務にも携わっていました。


その後、きちんとプロフェッショナルを採用する必要性を感じたので本格的に採用活動を開始して、現在はその流れで人事業務全般を担当しています。人事は人や組織を通じて事業成長を考えるので、事業理解が必要不可欠です。入社直後から自分の領域を決めずに、何事にもチャレンジし続けたことが全て今のキャリアに繋がっているなと日々実感します。


――渡邉さんが今後取り組みたいことについて教えてください。


渡邉さん:私は何か飛び抜けたことをやりたいというよりも、今の人事の仕事に実直に取り組むことで結果を出したいと思っています。結果というのは事業が大きく成長することだと思っており、そのために、より良い人財を採用して、その人が結果を出すためのコミュニケーション設計を行い結果が出たら評価する、という人材管理サイクルを構築し、より洗練させることが目標です。


経営者や事業責任者を人と組織の面から支える「HRビジネスパートナー」として、事業成長の実現に大きく貢献できる存在になりたいですね。


【編集部コメント】

ミッションを実現させるための戦略的なサービス設計とまだまだ成長が見込まれるアジア市場への進出に加え、社内カルチャーへのこだわりから、この会社は大きく成長していくだろうと感じずにはいられませんでした。そう思ったのは会社の魅力に加えて、事業成長を担う人々を採用するHRマネージャーの渡邉さんが、とても“品格のある”方だったから。こんな素敵な人事の方がいる会社には、きっと優秀な人材が集まるに違いありません。


【企業プロフィール】

スタイラー株式会社

2015年3月に設立。日本国内で約900店舗のアパレルショップをネットワーキングしているプラットフォームFACYの開発・運営を行う。また、「FACY」を通じて自動的にタイムリーなファッション情報が蓄積されるため、これらを活用したオウンドメディアを運営しており、記事コンテンツは、「SmartNews」「Gunosy」「LUCRA」「LINEnews」などに配信。読者数は月間150万アカウント以上に及ぶ。さらに、「オンラインおよびオフライン」、「日本およびアジア市場」、「メディアおよびコマース」、「ユーザーコミュニケーション」におけるライフスタイルビジネス領域のノウハウや知見を活かしたコンサルティング事業も展開している。


【渡邉 文佳さんプロフィール】

渡邉 文佳

スタイラー株式会社 HRマネージャー

NTTデータにてCRM業務全般に携わった後、ディー・エヌ・エー入社。 モバゲーのCS運用やショッピングモール事業でマーケティング・営業・サービス企画に従事。2017年7月にスタイラーへ参画。事業全般のサポートを行った後、HRを新設しマネージャーとなる。国内外の採用や採用広報、人事制度、組織開発など幅広い人事機能を担当。

LineNoteこのエントリーをはてなブックマークに追加LinkedIn