台湾から「アジアのAdobe」を目指すKdan Mobileの、日本市場での挑戦
2009年に台湾で創業された、ソフトウェアサービスベンターKdan Mobile。「A leading company for workplace mobility」をスローガンに掲げ、デバイスやOSに関係なくPDFファイルの閲覧や編集が可能な「PDF Reader」や直感的に誰でもプロのような本格的なアニメーションが制作できる「Animation Desk」など、数多くのモバイルアプリサービスを開発してきました。現在これらのサービスは世界167カ国で展開され、ダウンロード数は2億回以上に及びます。グローバルなSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)プロバイダーとしての存在感を強め、2019年からは日本進出も開始。そんなKdan Mobileで、日本担当チームに所属するSophy Linさんに、社内カルチャーや日本での市場開拓についてうかがいました。
――Kdan Mobileの事業内容を教えてください。
Sophyさん:個人ユーザーやビジネスユーザー向けに、SaaSサービスを提供しています。プロでも初心者でも手軽に美しいアニメーション作品が作れる「Animation Desk」、豊富なツールを使ってオリジナルなノートを作れる「NoteLedge」といった、コンテンツ制作ツールがメインです。
なかでも人気サービスは、世界6,000万人に愛用されている「PDF Reader」。デバイスやOSに関係なくPDFファイルの閲覧や編集が可能で、高いセキュリティ性を備えつつ、他社と比べて低価格での利用が可能です。
――Sophyさんの仕事内容について教えてください。
Sophyさん:日本向けSNSの運営やブランディング戦略など、マーケティングに関わること全般を行っています。また、日本語への翻訳や他国拠点の部門間のコミュニケーション調整、他社とのコラボレーション企画も私の仕事の一部です。Kdan Mobileには2019年9月に入社し、それ以前は日本に12年間住んでいました。
――どのようなきっかけで日本に来られたのでしょうか。
Sophyさん:語学学校への留学がきっかけです。私は日本文化が好きで、いつか日本と台湾の橋渡し役になれる仕事がしたいと思っていました。語学学校を卒業後、橋渡し役になるには両国での仕事のやり方を理解する必要があると考え、日本の大学院でビジネスを学び、卒業後は日系企業3社を経験。
2019年に台湾に帰国して、現在に至ります。台湾に戻ろうと思った理由は、長年日本で働いたことで、自分の仕事に対する姿勢や考え方があまりにも日本寄りになってしまったからです。一度台湾で働くことを決め、前職でのモバイルアプリのコンテンツマーケティングの経験を活かせられると思いKdam Mobileに入社しました。
台湾でも日本との橋渡し役になれる仕事を探していた私にとって、日本市場の開拓を進めているKdan Mobileはぴったりの会社でした。
――Kdan Mobileの社内カルチャーについて教えてください。
Sophyさん:社内カルチャーを表す言葉として「A quick learner who is not afraid to try or make mistake is built in Kdaner's DNA」を掲げています。この言葉どおり、意見のぶつかり合いや間違いを怖れずに、挑戦することが推奨されています。もしやりたいことがあれば、提案して上司や同僚に納得してもらえれば実現でき、とてもオープンで自由な雰囲気です。
――Kdan Mobile ではどのような人材育成を行っていますか。
Sophyさん:メンバーによってキャリアの方向性が異なることを理解し、それぞれの持つ専門分野の技術向上のサポートをしています。自主的な学習を推奨しているので、勉強したい分野があれば外部の講座を会社費用で受講することも可能です。私はプロジェクトマネジメントの講座に参加しました。メンバーの成長意欲を尊重してくれる環境は有り難いですね。
――日本市場における取り組みについて教えてください。
Sophyさん:まずは日本展開の足がかりとして、2019年7月に日系ソフトウェアプロバイダーであるソースネクスト株式会社と提携しました。この会社は、日本の携帯キャリアにアプリを提供しています。
提携によって、Kdan Mobileで最もユーザー数の多い「PDF Reader」を、ソフトバンクのApp Pass(月額370円でさまざまなジャンルの人気アプリにアクセスできるサービス)を通じて日本のユーザーに提供することが可能となりました。
「PDF Reader」の日本ユーザーは個人事業主や中小企業が多く、今後もこのユーザー層を増やしていく方針です。現在は主力商品である「PDF Reader」に注力していますが、マルチメディアノートアプリ「NoteLedge」やモバイル端末用の動画編集アプリ「Write -on Video」の展開も順次進めていきたいですね。
日本事業をさらに拡大するために、私が所属している日本チームでは新たに人材を募集しています。求めているのは、日本語能力はもちろんのこと、日本文化への理解があり、自分の頭で考えて行動できる人材です。
弊社は社員約100人のうち、6割が台湾人、3割が中国人、1割はアメリカ人で、さまざまなバックグラウンドを持つ人が一緒に働いています。そのため、語学力があるだけでなく、異文化や多様性( ダイバーシティ)への理解をもつグローバルな人材を採用する方針があります。
――最後に、Sophyさんが仕事の中でやりがいを感じていることを教えてください。
Sophyさん:自分の才能や能力をより発揮する環境が与えられ、自分を成長させてくれる人と一緒にチームを組むことができることにやりがいを感じています。仕事を通じて成長できたと感じる機会が、今まで以上に増えましたね。
最近はコロナウイルスの影響もあり、オンラインマーケティングの仕事を中心に行っていますが、今後は日本市場のシェア拡大をさらに推し進められるよう、チーム一丸となって取り組んでいきたいと思います。
【編集部コメント】
日本と台湾の「橋渡し役」になりたいという夢を持ち、それを実現されたSophyさん。両国で働いた経験からのカルチャーギャップとして、日本では意見を言う時に「かもしれない」「おそらく」といった断定しない話し方が好まれる一方、台湾では自信を持って断定した話し方をしなければ話を聞いてもらえないということを挙げられました。話し方ひとつとっても文化によって違いがあるため、採用の際に知っておくと役に立つでしょう。
【企業プロフィール】
2009年に設立以来、ユーザーが生産性と創造性をより良く活用できるモバイル・ソフトウエア・アプリケーションとオンラインサービスの提供に専念しているプロバイダー。「A leading company for workplace mobility」をスローガンに掲げる。Kdan Mobileのアプリは世界で2億万回以上ダウンロードされており、そのソリューションは各プラットフォームのさまざまなデバイスを通したプロジェクトの創造、配分、結合で世界に力を与えている。台湾に本社を置き、中国と米国、日本で事業を展開中。
【Sophy Linさんプロフィール】
Sophy Lin
Kdan Mobile Business Development
日本大学大学院商学研究科卒。大学卒業後はJapan cars株式会社での営業アシスタント、株式会社レプハウスでの海外バイヤー、アイベック株式会社でのコンテンツマーケティング職を経験。12年間の日本滞在を経て、2019年9月より台湾に帰国して現職に至る。