3年半で社員が12倍に! 空席情報で世界No.1を狙うバカンの組織作りとは
大切な時間をさらに大事にするために、「いま空いているか1秒でわかる、優しい世界」をつくることをミッションとする株式会社バカン。空席情報を集めてユーザーに提供することで、「行ってみたけど、ダメだった」という状況をなくすことを目指しています。空席情報サービス分野でグローバルNo.1を目指すバカンを率いる、代表取締役の河野剛進さんに人材採用と組織作りについてうかがいました。
――バカンの事業内容を教えてください。
河野さん:飲食店やトイレなどのリアルタイムの空席情報を、センサーやカメラで混雑状況を自動検知することで電子看板やスマートフォンに表示する空席情報プラットフォーム「VACAN(バカン)」と、お弁当の取り置きサービス「QUIPPA(クイッパ)」を展開しています。
――起業のきっかけは何だったのでしょうか。
河野さん:子どもとの外食がきっかけです。以前は仕事人間だったのですが、子どもが生まれてからは価値観が大きく変わり、家族との時間も大事にするようになりました。でも、休日に子どもを連れて商業施設へ行っても、大混雑で空いているレストランを探すだけで一苦労。しまいには子どもが疲れて泣き出してしまい、店に入らずに帰宅したこともありました。
出かけても店に入れるかわからないので、だんだんと外出自体を億劫に感じるように。この経験から、「店の空き状況がリアルタイムでわかれば、時間をもっと大切にできる」と考え、空席情報サービスの立ち上げを決意しました。
――創業からたった3年半で、メンバーが約60人にまで増員されています。弊社サービスからは台湾人メンバーを2名採用されるなど、海外人材も積極的に採用されていますが、組織拡大によって起きた変化を教えてください。
河野さん:これまでは一人ひとりが様々な業務を担っていたのですが、専門領域を持った社員が増えたことによって、個々人がやるべきことに集中できる環境が整ってきました。その結果、業務効率が良くなり、できることの幅が広がりましたね。組織作りにおいては、これまでに2回開催した合宿が大きな役割を担っています。
メンバーが何名に増えても、圧倒的な心理的安全性を保つことが重要です。社員数は急速に増えていますが、常に新しいことに挑戦し、世の中にまだない価値を作るというマインドを持ち続ける組織でありたいと思っています。
――今後の拠点展開はどのように計画されていますか。
河野さん:日本と中国に拠点があり、日本では東京、大阪、北海道、福岡で拠点を展開しています。これらの拠点は営業拠点ですが、将来的には地域ごとの課題やニーズを取り込みながらプロダクトを作る開発拠点にするつもりです。本社中心で物事を進めるのではなく、それぞれの地域ごとにアイディアを出して挑戦し、その成果をグローバルのプロダクトに活かしたいと考えています。
グローバル拠点は中国・上海のみですが、ここからアジア全域に広げ、ゆくゆくは世界各国に進出することで、空席情報サービスのマーケット自体の拡大を目指します。
――2020年の目標について教えてください。
河野さん:日本では全国展開を一気に進め、中国では勝ち筋となるニーズをしっかり見つけることが目標です。その際の拡大方針は、これまでのように商業施設や百貨店、オフィスや空港へ単体でのサービス提供をするだけではなく、町単位でのサービス提供です。
町全体の空席状況がわかれば、ユーザーは効率よく空いている場所を探して行けるようになります。今後2、3年の間に空席情報データのネットワーク化を実現することで、より良いユーザー体験を提供したいですね。
――バカンのサービスの独自性は何だと思いますか。
河野さん:混雑状況の解決に特化しているサービスは他にないので、サービスの存在自体に独自性があります。もし真似をしようとしても、空席情報データを集めて分析し、それを電子看板やスマートフォンなど、多種多様な機器に配信できる仕組みを作ることは容易ではありません。特に空席情報データは、場所によって最適な収集方法が異なります。
私たちはVCOREという技術によって、センサーとカメラの様々な組み合わせを作り出すことが可能なので、どんな場所でも簡単にデータを集められることが強みです。
――採用において、求める人材像について教えてください。
河野さん:最も重要なことは、バカンのサービスに共感し、世の中に広めたいと心から思っていること。その上で、私たちが組織の共通の価値観として定義している3つのバリューを大事にしてくれる人と働きたいですね。
バリューのひとつ目は、プロフェッショナルとしての誇りを持ちながらも、常に相手の意見に耳を傾けることを忘れないこと。ふたつ目は、一人ひとりが意思を持ってチームを導くとともに、自分を信じ、仲間を信じ任せることでそれぞれのパフォーマンスを発揮すること。3つ目は、自身が楽しみ、そして楽しませることができるサービスを届けながらも、社会、顧客、品質に対して誠実に向き合うことです。
これらを簡潔に、「Pride & Respect(誇りをもつこと、尊重すること)」、「Trust & Lead(信じること、導くこと)」、「Delight & Integrity(楽しませること、誠実であること)」と定義しています。私たちにとって、戦略よりも上位にくる概念です。相反するようにも見えるこの3つのバリューを体現しながら、今後もミッションの実現に邁進したいです。
【編集部コメント】
リアルタイムの空き状況がわかれば、待ち時間だったはずの時間を別のことに使ったり、心にゆとりを持って過ごしたりすることができるはず。バカンが提供するのは、これまで「ありそうでなかった」サービスではないでしょうか。2019年にはNTT東日本や清水建設ほか複数社より7.9億円を調達するなど、大企業からの注目も集め、今後のさらなるマーケットシェアの拡大が期待されます。
【企業プロフィール】
2016年6月法人設立。すべての空席情報を集約する「Vacant-First」(ベイケント・ファースト)を実現する空席検索プラットフォーム 『VACAN』と、お弁当の取り置きサービス『QUIPPA』を開発・運営。
2019年6月、NTT東日本、清水建設、ティーガイア、JR東日本スタートアップ、スクラムベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により7.9億円を資金調達。
【河野剛進さんプロフィール】
河野 剛進
株式会社バカン 代表取締役
東京工業大学大学院修了(MOT)。三菱総合研究所で市場リスク管理やアルゴリズミックトレーディング等の金融領域における研究員として勤めた後、グリーにて事業戦略・経営管理・新規事業立ち上げ、および米国での財務・会計に従事。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。